【解決の突破口】行動障がいを持つ人への支援2

支援のとっかかり

こんにちは。宵です。

前回の記事の最後で

  • 利用者が得ている『メリット』を考える
  • 『メリットは主に4つに分けられる』(4つのポイント)

の話をしました。

今回はそれを踏まえて

  • 『問題』とされる行動を、どう無くしていけばいいのか(あるいは減らしていけばいいのか)

という話をしていきたいと思います。

今回もまた『行動障害のある人へのアプローチ 施設職員ABA支援入門』(著:村本浄司、出版:学苑社)を参考にさせていただきます。

【追記】本からの引用部分に関しては『””+太字』で記載してあります。またあくまでこの記事は『本を読んだ宵という一個人が、仕事を通した上で考えたこと、思ったこと』を書いてます。ご了承ください。そして興味を持った、役に立ちそうだと思った方は購入して読んだ方がいいです。絶対。

※今回は経験談を踏まえた話が特に多くなっています。ご了承ください。

利用者の目線で考える

  • 利用者が同じメリットを得られるようにする

繰り返しとなりますが、問題から利用者が得ているメリットが何なのかを支援員側が把握してから、いよいよ具体的な解決案を考えます。

解決案を考える時の、最も大事なポイントは

  • 利用者が、行動を変えたとしても同じメリットを得られるようにする事

です。

ここを間違えると支援になりませんし、解決も出来ません。

問題を起こさずとも結果が得られるようにしないとならないのです。

『そうはいっても、何でもかんでも叶えるなんてできない』『お菓子を食べたいといわれたら、朝でも夜でも食べさせてあげなきゃいけないの?』という考えが頭をよぎる人いるでしょう。

けれどもその時は、【支援者が心がけておくべきこと】を思い出しましょう。主観は横へ置いておきます。

自分の思い込みを取り去った時、利用者は案外『私たちが日々提供できる物で、穏やかに暮らしていけるんだ』という事に気がつくでしょう。

『提供するものの質や量』にこだわっているのは、実は支援者側だったりします。

『注目』誰かから注目されたい人には?

  • タオルたたみなどの簡単なお手伝いを頼む
  • 片づけや洗い物の作業中、近くにいてもらう

ここからはメリット別に、私が実際に経験した中で効果があったと感じるものを話していきます。

まずは注目を求めている利用者についてです。

注目、引いては他者との関わりを得たいがために、他の利用者に攻撃的な物言いをしたり、時には手を出したりしてしまう場合ですね。

これをされると支援員も感情的になります。

『駄目でしょ!』『やめてください!』ときつい言い方をしてしまうことも。

ですがその発言で、利用者の行動は減ったでしょうか。私の場合は減らなかったです。

前回の記事で話したように、その言い方こそが『メリット』なので当たり前ですね。

『言われた利用者は怒っていた。だからメリットではない』と考えることもありましたが、メリットだからと言って必ずしも喜ばしい反応を返してくれるとは限りません。

そのあたりのコントロールが出来ない部分が、『障がいを持つ困難さ』なのではないかと考えています。

そして解決策も単純でした。

こちらから声をかけて、近くに来てもらうだけでいいのです。

お手伝いをしてもらったら『ありがとうございます』

それが難しい場合は、『いまから片づけするので、そこで見ててくださいね』

ただ声をかけて、近くで過ごすだけで他者への攻撃は随分と減りました。

そうして要求が満たされたら、本人は『テレビ観てくる』と言い部屋に入る。気持ちが落ち着いたことでようやく、本当に自分がやりたいことをする余裕が出てくるわけですね。

『ずっとその人と関わっていないと満たされないに違いない』『散歩や買い物にたくさん連れて行ってもらいたいんだ』と考えていた頃もありましたが、それは私の大きな勘違いだったというわけです。

勿論この場合は、日々継続していかないといけないものです。

けれども、他の利用者とトラブルになってから止めるのに比べれば、とても気持ちが楽です。

利用者も支援員も楽になれるならそれが一番な事だと、私は思います。

『要求』物が欲しい、どこかに行きたい人には?

  • いつ貰えるのか(行けるのか)を視覚的に確認できるようにする

これに関しては、利用者がわかる形で『いつ叶うのか』を提示してみましょう。

利用者を買い物に連れていける機会はどの程度でしょう。

毎日、と答えられる施設は少ないはずです。

週ごとであったり、月ごとであったり。

なのに利用者は毎日『今日は?』と聞いて来る。それになんと答えていいのか。悩む支援員は多いはず。

下手に誤魔化そうとして、『今日が良い!』と言われることも。あるいは『今日じゃないよ』と答えて『なんで!』と怒られたり。経験は無いでしょうか。

さてここで質問ですが、利用者が物を得た時や行きたい場所に行けた時、それを十分に楽しめていると感じたことがあるでしょうか?

楽しめてるなら、いいのです。その利用者は本当に要求を叶えてほしかったのでしょう。

けれど、それで満たされない人もいます。

『物をほしがる』だけで、いざ買ったらそれを使う様子が無い人。

『買い物に行きたがる』だけで、買い物中には次の外出に気持ちが向かってしまっている人。

そういう人には『物/外出』ではなくいつになったらいけるのかという『見通し』を提供してみましょう。

カレンダーやシールを使ったやり方が、導入のハードルも低いためおすすめです。

『これをしたらシールを一枚貼ります』『○個貯まったら、おやつを1回食べます』というやり方ですね。

ただここで一つ気を付けなければならないのは、決してこれを『ご褒美』だと思わないようにしてください。支援員側がそう思ってしまうと、『これ出来ないとシール貰えないよ』という【罰】の側面が発生してしまうからです。

あくまで『いつ貰えるか』を示す、タイマー的な役割なのだと意識してください。

『貯まらないからもらえる日がずれる』と結局、見通しとして機能しません。

なのでシールを貼る条件は『本人が必ず行えるもの』で設定をしましょう。

そうすれば、『いつ貰えるの?』の質問に『あと3個シールが貯まったらね』と具体的に返せるようになります。時には本人から『あと3個貯めれば貰えるね』と返ってくるようになるかもしれません。

買い物、外出の日程も同様に、『朝起きたらカレンダーにシールを一枚貼る』などと決めて、実施するといいかと思います。

補足…シールやスタンプ(トークン)を使った支援の注意点
実際に導入するときには以下の点を定め、支援員間で充分に周知しましょう。

トークンを得るタイミング:『これをしたらシールを貼る/スタンプを押す』と決める。
本人がそれを得たと意識できるようにする:利用者自身でシールを貼る、スタンプを押すようにする。
台紙や道具の管理:台紙は利用者がいつでも確認できる状態にしていた方がいい。本人の管理が難しい場合は支援員が持ち、見たいと言われたらいつでも見られるようにしておく。カレンダーなら自室内の壁に掲げておく、でも良い。

やり方としては簡単ですが、複数人での支援の場合はどうしても混乱が出てきてしまいます。定着するまでは繰り返し、『何のためにするか』と共にやり方を説明していきましょう。

※今回の場合は『見通し』のためのシールやスタンプですが、『ご褒美』のためにトークンを導入することもあるでしょう。支援員側が『目的』を明確に把握していることが大事です。

『逃避・回避』嫌なことから逃げたい、避けたい

  • 行動が起こる理由が『環境』の場合、本人が過ごす場所を整える
  • 行動が起こる理由が『人』『状況』の場合、理由の方を遠ざける

逃げたい理由、避けたい理由の方を無くしていく。当たり前でいて難しいのがこの項目。

ここからはやや抽象的な話も入って来ますが、極力想像しやすいよう説明していきます。

作業を行う利用者が突如声出しを始めたとして、本人が『周囲の雑音』『寒さ・熱さ』『電灯の眩しさ』などを苦手としているのならばそれは『環境』が理由です。

それらの要素を取り除いた作業環境を整えることで改善されるでしょう。

あるいは、『特定の利用者・支援員の姿』であったり『20分以上変化の無い作業時間』を苦手としているのならば、それぞれ対応もわかりやすいと思います。姿が見えないように工夫したり、15分に一度休憩を挟めばよいのです。

ですが利用者の中には、何を苦手としているのかを訴えられない人もいるでしょう。

そもそも、自分自身でも何が嫌なのか理解しきれていない方もいます。

そのための支援者ですが、手掛かりが無ければ見立ても出来ません。

『逃避・回避』への支援の難しさはまさにそこにあります。

利用者ひとりひとりを観察をし、前後の状況や様子から探り、日数も時間もかけてようやく、手掛かりを得ることが出来るのです。

さらに『逃避・回避』を目的としているのか、上記でも説明をした『要求(別の場所に行きたい)』を目的としているのか、判断がつかない場合も多々あります。

この問題への対応は、ありとあらゆる可能性を考えながら、一つ一つ検証を行っていくしかないと考えています。

ただしパッと思いついた理由が大当たりだったりすることもあるので、気負わず観察を続けていきましょう。原因さえわかれば対応しやすい部類に入るのではないかと思います。

作業等でもし本人に『どうしても行いたくない』という意志があるなら、『これは本当にこの人にしてもらわなければならないのか?』と支援員が考えることも重要です。

人間、したいことだけをして生きていくというのは障がいの有無にかかわらず中々難しいですが、金銭の理解と欲が薄い方に対し『能力があるから』と言う理由で作業を提供しても上手くハマらないことがあります。

能力と望み。できることとやりたいことは別に分けて考えて行けば、問題の解決も支援もやりやすくなるかもしれません。

『感覚』感覚が欲しい、不快な感覚を取り除きたい

  • 行動時本人が『暇を持て余していないか』を見る
  • 同部位に対する自傷が続くようであれば、その箇所付近に変化が無いかを確かめる

前回の記事では後者に重点をあてて話しをしました。

『痛みから逃れるために自分を叩いている』という例ですね。

後者に関しては前回の記事の中で触れたことがほぼ全てです。上手く訴えられない身体の不調があるのなら、支援員が適切な対応を取らなければなりません。

一見脈絡のない自傷が、繰り返されているなと感じたら、その付近に異常が無いかを見てみましょう。

今回は前者の『暇を持て余していないか』を見る、ということに関してを掘り下げていきます。

前回記事では”『自らの感覚を得るために行う行動問題』”があるという話をほんの少しだけしました。

利用者の中には身体の感覚が鈍い方がいます。そのため自分自身で刺激を起こし、感覚を得ることがあります。

刺激の行動は本によると、”「身体を前後に動かす行動」「耳ふさぎをする」「手をひらひらと動かす」などの動きによるものや、「コマーシャルなどのセリフを繰り返す」などの話しことばによるものも含まれる。”(P86)とあります。

それらの行動が見られた際には、『いま自分で感覚を得ているんだ』と考えれば良いと思います。

逆に無くそうとしたり、止めさせようとはしない方がいいでしょう。本人の感覚は本人にしかわからないものであり、止めようとしたことで別の問題を誘発しかねません。

『本人が行いたい』と思っていることをしてもらう。それも支援の一つだと思います。

今回のまとめ

  • 利用者が同じメリットを得られるようにする
  • 各パターンごとに、それを満たす対応をする

利用者支援の考え方は一日二日で身に着くものではないと思います。反面、一度見方を覚えると、誰が何に困っているのかすぐわかるようになります。

一連の記事はあくまで『新人が押さえておくといい情報』として書きました。今回の物に関しては多少難しかったり、チームでの支援が必要な部分が発生していますが、基礎部分なことに変わりはありません。

『強度行動障害支援者養成研修』等に参加すると、ここまでに話したことが形を変えて出てくるんじゃないでしょうかと思います。

仕事でやってみて、初めて分かることもものすごく多いです。上で【『提供するものの質や量』にこだわっているのは、実は支援者側だったりします。】と述べましたが、これを実感できるようになるのは、それなりの時間がかかるかもしれません。

焦らず、こつこつレベルアップしていきましょう。

本にはまだまだ専門的な情報が載っています。このブログで紹介したものはあくまで一部にすぎず、他にも押さえておいた方がいい知識が多く載っています。

私の体験をまじえた抜粋だけではなく、理論に裏付けされた知識を得たいと思うなら、自身で読んでみてください。

何事も、自分の体験と知識が組み合わさった状態が一番強いです。

また私自身まだまだ勉強中の身の上でもあります。知識をつけ、更なる支援方法や考え方を深めていきたいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

【追記のあとがき】
本来ならば『知的障がい』『行動障がい』ではなく『知的障害』『行動障害』と書くべきなのでしょうが、記事内は極力前者を使わせていただいています。ただし引用の場合は引用元の表記をそのまま使用します。

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