知的障がい者の施設で楽しく働くために【読んでおきたい本】

支援のとっかかり

こんにちは。宵です。

前回の記事の最後に書きましたように、ここからは

  • 入職後に役立つ、知的障がい者支援のあれこれ
  • 先輩支援員が後輩支援員に教えていけるといいこと

の二点をテーマにお話したいと思います。

具体的には下記の本の紹介と、本を読む時のポイントになります。

【追記】本からの引用部分に関しては『””+太字』で記載してあります。またあくまでこの記事は『本を読んだ宵という一個人が、仕事を通した上で考えたこと、思ったこと』を書いてます。ご了承ください。そして興味を持った、役に立ちそうだと思った方は購入して読んだ方がいいです。絶対。

【まるっと解決】施設職員ABA支援入門【おすすめの本】

いきなり結論なのですが、知的障がい者に関わる仕事をしている方で、利用者の支援に悩んでいるならば、『行動障害のある人へのアプローチ 施設職員ABA支援入門』(著:村本浄司、出版:学苑社)を読破すれば大抵のことは解決できます。

  • どんな本なのか

ざっくり言うと、ABA(応用行動分析学)を用いて『相手がどうしてその行動をとっているのか』『どうしたらその行動が変わる/なくなるのか』を探っていく本です。

  • 著者の村本 浄司さんてどんな人?

以下巻末著者紹介より引用。

東京福祉大学社会福祉学部社会福祉学科講師。筑波大学大学院修士課程教育研究科障害児教育専攻、その後のつくば大学大学院博士課程人間総合科学研究科において応用行動分析学と自閉症児への臨床を学び、博士(行動科学)を取得。その後、知的障害者総合援護施設茨城県立あすなろの郷で研究員として「強度行動障害のある人への支援法」について後進の育成と実践研究を重ねる、2014年より現職。

施設職員ABA支援入門より(著:村本浄司 出版:学苑社)

【ココが大事!】この本のおすすめポイント【支援に悩んでる人向け】

おすすめポイント:強度行動障害を持つ人へのアプローチ方法がわかる

知的障がい者の支援において、現場支援員が一番頭を悩ませているのは『強度行動障害を持つ人への支援』です。

強度行動障害とは…激しい自傷や他害、こだわり、睡眠の乱れ、異食、物壊し等が頻発する事。

頻発、というように一度二度では終わらないです。発生の都度対処していかなければなりません。

昼夜も状況も問わず発生する『問題』とその『対処』に追われ、疲弊し、支援困難になる状態を幾度となく見て来ましたし、私自身も体験しました。

この本にはそう言った方々へどう支援すればいいのか、支援員がなにを心掛け、行動すればいいのかが書いてあります。

【新人でも活用できる】すぐに取り組める内容はどのあたり?

  • まず【支援者が心がけておくべきこと(P42)】を読みましょう

利用者のとった行動について考える時は”観察可能な客観的に見える行動のみを考えるべきであって、その人の内面である性格や心の中についてはとりあえず横に置いておく”べきだと本には書かれています。

AさんがBさんを叩いた、という行動から「AさんはBさんのことが嫌いだったんだ」「Bさんの声がうるさかったから気に障ったんだ」「Aさんはただ憂さ晴らしがしたかっただけ」など、行動の原因を「その人のこころにある」とは考えないようにしましょう、という事です。

当人以外に正解はわからないからです。

むしろ支援員の決めつけによって支援の判断を誤り、問題が解決するどころか悪化する場合もあるでしょう。

AさんがBさんを叩いた、という事実だけをとらえ、記録しましょう。まずはそこからです。

  • ところで、どうしていきなり本の途中から読むの?

この本は初心者向けです。それは間違いないです。

イラストが多く、具体的な支援事例も載ってます。現状、これ以上わかりやすい本は無いのではないでしょうか。

けれども、やっぱり、難しい

新人さんに『これとてもいいから読んでみて』と渡すには難しい。

そもそも応用行動分析学って単語がすでに難しい。なのでこの本を読んで『わかりやすい!』『こんなことが知りたかった!』と思う人はたいてい、【強度行動障害支援者養成研修 基礎研修】を受けた中堅以上の人なのではないでしょうか。

同じ研修を受けていても新人、あるいは日中の支援にあまり関わらない夜勤専任の支援員は研修の感想を聞いても『よくわからなかった』と話していました。

なので、手っ取り早くこの本が【有用だ】と思ってもらえるところから順に紹介しています。

そもそもこんないい本があるのに現場が変わらず大変な理由

  • 根っこの理由は人手不足

私は十年以上福祉施設で働いています。十年と言えば小学校一年生が高校一年生になれてしまうだけの時間です。

この本の持つわかりやすさ、簡単さというのは言わば、高校一年生が小学生の頃の教科書を読んで『こんなんやったなぁ』『このあたり、忘れてたわと思うようなものです。

つまり小学校一年生にあたる『今年入った新人さん』に対して【三年生の理科の教科書】とか【五年生の国語の教科書】を渡す感じ。そりゃ理解するのは大変だ。

さらに言うなら、福祉一年生が最初にやるのは『食事・入浴・排泄』の支援でしょう。これはいわば、体育と音楽と図画工作だけで時間割が占められているようなもの。研修という名の座学はそう頻繁にはありません。

施設側も余裕とノウハウが無いまま歴史だけは積み重なり、『勤務時間内で理論を学ぶ時間を設けよう』という提案をしても『難しいことはしたくない』『いまのままでいい』『その間、現場はどうするんだ!』という支援員の声に押し負ける。

一回学んで理解してしまえばそのあとずっと楽になるのに、それを知らないからやらないわけです。

そして利用者に振り回され、疲弊して、辞めたことで人手不足になり、ますます知識を得る時間も気力も減っていく……現場の悪循環はこんな感じ。

結果、きちんと学べば無くなるはずの『問題』に振り回され続ける。そりゃしんどい。

どこかしらで変わらなければずっとそのままなので、そこから脱出するためにこの本を使ったABA支援の実施をおすすめします。

【利用者のためでもあり】わかると楽しい支援のこと【自分のためでもある】

  • 支援に『楽しい』と『楽ちん』を求めたっていい

良い支援を提供し、利用者の抱える問題が無くなれば、支援員もだいぶ楽になります。

問題や課題の『対処』に振り回されるのが仕事じゃありません。利用者と一緒に『楽ちん』を求めていきましょう。

そのための知識はこの本『行動障害のある人へのアプローチ 施設職員ABA支援入門』にあり、読むためのとっかかりとしてこのブログを作りました。

まとめ

  • 施設職員ABA支援入門を読めば大抵の問題は解決できる
  • 本のおすすめポイントは『強度行動障害を持つ人へのアプローチ方法がわかる』こと
  • 『事実だけを捉え、記録する』ことから取り組んでみよう
  • せっかく良い本があるのだから試してみよう
  • 楽しい支援、楽な支援を求めたっていい

比喩ではなく、この本を一冊読むだけで現場はだいぶ変わると思います。

けれども支援は『チーム』で行うもの。つまりは全員がこの本の知識を身につけ、実践しないといけないという事。

それをいきなりしようというのはハードルが高い。

なので最初は新人からでも出来る『事実だけを捉え、記録する』ことから取り組んでみましょう。

また先輩支援員は、後輩がそれを実践できるよう指導してみてください。

ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。記事を読んでこの本に興味を持った方は、ぜひご自身で中身を読んでみてください。

※本の紹介はもうちょっと続きます!

【追記のあとがき】
本来ならば『知的障がい』『行動障がい』ではなく『知的障害』『行動障害』と書くべきなのでしょうが、記事内は極力前者を使わせていただいています。ただし引用の場合は引用元の表記をそのまま使用します。

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